バーチャル空間のための設計 - Digital Explorers' Diary #48

Digital Explorers' Diary #48

Digital Explorers' Diary #48へようこそ。

インタラクティブ技術、AI、web3、センスメイキング、起業、心理学をめぐる、考えるきっかけになるトピックを厳選してお届けします。

今回の要点:

  • 仮想環境向けの体験設計をどう考えるか。
  • Metaの最新AIモデルLlama2がオープンソース化され、商用利用も無償に。
  • ChatGPTと生産性。
  • 会議中にバーチャルメイクができる、Microsoft TeamsのMaybellineプラグイン。
  • そして意識を持つAIをつくろうとする、恐ろしい事業The Simulation。

仮想環境のための体験設計

VR、MR、ARを用いたインタラクティブな体験は、多くの点で現実そのものとはまったく異なります。仮想環境とのやりとり、物理法則、時間、そのほか数えきれない要素が、現実の世界より強く制約されているか、逆に途方もなく自由かのどちらかです。制約はほぼ存在せず、想像力が形になる舞台が広がっています。

こうしたプロジェクトの開発と設計では、まったく新しい視点を取り、企画を根本から考え直して新しい技術に合わせる必要があります。利用者にとって楽しく、かつブランドや製品にとって意味のあるものにするためです。いくつか例を見ていきましょう。

まずごく基本的なところから。360°動画はもう何年も前から存在し、撮影と公開にかかる費用は今やごくわずかです。確かに、どの方向にも見渡せて、どこを見るか自分で選べるという最初の「わあ」という驚きは素晴らしい。しかし中身がごく単純な映像であれば、その高揚はすぐに醒めます。人を惹きつけるには、360°の映像があらゆる方向を存分に活かす必要があります。何度も見返すたびに新しい要素が見つかる、動きのある体験にするのです。物語を左へ、右へ、上へ、下へと広げてください。その好例が2017年の短編「Your Spiritual Temple Sucks」です。抜粋はこちらでご覧いただけます

複雑さを一段上げて、VRを見てみましょう。小売業のみなさんに助言を一つ。実店舗をそのままVR空間に再現するのはやめましょう。現実では見栄えがしても、VRに持ち込んで同じように機能するとは限りません。店舗を丸ごと複製した中国のアリババの例を見てください。前評判とは裏腹に、期待された成功は得られませんでした。店舗が非常に広く、歩き回るのに時間がかかったのです。そこに他の客がいないことが加われば、不気味で寂しい体験になります。むしろ、すべてを変えてください。VRでは物理法則も建築の制約も通用せず、テレポートも可能で、最もうまくいくのは多人数で楽しむソーシャルな体験です。

VRとARが交わる領域では、MRがさらに話を複雑にします。そこには利用者の現実世界があり、その上に仮想の物体が重なります。Apple Vision Proの基調講演が示したとおり、単純なコンピューターのインターフェースを空間に置くことすら複雑な作業です。MRの優れたゲームは、盤面をテーブルに置いて終わり、というものではありません。そうではなく、部屋のあちこちに要素を固定し、使える空間をすべて活かし、現実の物理と仮想の物理を融け合わせるものになるはずです。楽しみな時代が待っています。

今週のニュース:

  1. AIの世界で非常に重要な発表です。MetaがLlama2を公開しました。最新の大規模言語モデルを、オープンソースかつ商用利用も無償で使える形で出したのです。これは大きな転換です。モデルをオフラインで、しかも無料で使えるようになりました。これまで主要なLLMは、有料契約とクラウドAPI経由でしか利用できなかったのです。
    この先に何が起こるか想像してみてください。どの開発者もLlama2を追加学習させ、自社サーバーや手元の環境で動かせるようになります。これは例によって、素晴らしくもあり、不安でもあります。OpenAIのようなクラウドAPIなら随時制御し調整でき、その変更は全利用者に及びますが、Llama2はそうではありません。ひとたび世に出れば、人々がそれで何をするかは分からないのです。Metaは責任ある利用の手引きを用意しましたが、それは悪意ある使い手を相当に信用するということでもあります。ちなみに、いまこの瞬間、Llama2のトップページからその手引きへのリンクは切れています。
  2. ハリウッドの俳優と脚本家がストライキに入るなか、The Simulationという企業が、AIで全編生成したサウスパークのエピソードを公開して話題を呼びました(例はこちら)。
    当然ながら強い反発を受けましたが、The Simulationの本当の狙いは残念ながら誤解されています。彼らの最終目的はテレビ番組をつくることではありません。
    彼らのサイトにあるディストピア的な紹介動画をぜひご覧いただきたいのですが、要約しておきます。彼らは、AIが動かす仮想の人間たちが暮らす仮想世界群をつくろうとしています。その人間たちが意識を持つことを期待し、あなたの役割は、目覚めたばかりの彼らの意識を導くことだというのです。そのAIは誰にでもなり得ます。あなた自身、あなたの家族、亡くなった身内。
    これがなぜ悪い考えなのか、説明する必要があるでしょうか。SFがすでにすべて描いてきたことです。
    私からの提案です。むしろ多くの仮想世界をつくり、人類の未来をより良い価値観へ、より少ない貧困と苦しみへと導く方法を、探り、学び、実践してみてはどうでしょうか。
    そうなることを願います。
  3. MaybellineとMicrosoftが協業し、Microsoft Teams内で動くビューティーアプリを出しました。
    SnapchatやInstagram、TikTokのフィルターに似ていますが、会議画面に直接組み込まれています。実現したのは、L'Oréalが買収したARメイクの優れたSDKであるModifaceです。
    評価は分かれています。一方では、ARメイクの巧みな活用であり、会議で気後れせず自信を持って臨む助けになりますし、実際に化粧をしなくて済むぶん時間の節約にもなります。
    他方で、利用者の自己認識や身体像、現実との関係にどんな影響を及ぼすのでしょうか。掘り下げたい方はLiv Boereeによるこの動画「Beauty Wars」をご覧ください。
  4. 2023年7月13日に公開されたこの研究から、ChatGPTと文章作成の生産性について手短に。
    速度は全体で40%、質は18%向上。
    さらに興味深いのは、ChatGPTの利用が働き手のあいだの格差を縮めたことです。実際、もともと技能が弱い参加者ほど恩恵が大きかったのです。
    しかもこれはGPT-4以前の話です。AIアシスタントが従業員を支え得ることを示す、非常に良い示唆であり、こちらで述べた「拡張された知性」そのものです。

ポッドキャストから

毎週、Guillaume BrincinSébastien Spasとともに、ポッドキャストLost In Immersionをお届けしています。今週の内容は次のとおりです。

  1. 先週お伝えしたとおり、RobloxがMeta Questにやって来ます。議論から見えた最大の論点は、コミュニティに受け入れられるかという大きな疑問です。Robloxの5,000万人を超えるデイリーユーザーの大半は、モバイルで遊んでいます。VRでは操作の仕方がまるで違い、それがRobloxの持ち味である遊びやすさを損なう恐れがあります。
    結局のところ、大きな問いはこうです。これはMeta Questに新しい利用者を呼び込むのか。それともMeta Questの所有者をRobloxへ導き、この端末の非常に短い平均利用時間を押し上げるのか。
  2. 次に、利用者がiPhoneを使ってApple Vision Proの前面ディスプレイを模してみせた下の動画をめぐる話題について。多くの「バズ」がそうであるように、その裏に大した中身はないと私たちは見ています。忘れないでください。企業や産業や社会の実態は、LinkedInで目にするものとはまるで違います。
  3. 続いて、ゲーム向けのGoogleの最新技術Google Earth Tilesの見事な実例へ。要するに、Googleストリートビューで見られる場所なら、どこでもゲーム内に呼び出せるということです。このデモでは、地球の上空を飛ぶスーパーヒーローになれます。オープンワールドのゲームにとって素晴らしい道具であるのはもちろん、建築、建設、イベントなど多くの産業でも使えます。応用は数えきれません。

下のポッドキャストをご覧ください。毎週火曜UTC10時にTwitchで配信、アーカイブはYoutubeでご覧いただけます。

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