没入体験を本当に価値あるものに - Digital Explorers' Diary #59

Digital Explorers' Diary #59へようこそ。
インタラクティブ技術、AI、web3、センスメイキング、起業、心理学をめぐる、考えるきっかけになるトピックを厳選してお届けします。
今回の要点:
- 没入体験でどう価値を届けるか。
- Humane AIの新しいデバイス。
- MetaがTencentと提携。
- SamsungとGoogleの端末は2024年末を予定。
- そしてSnapchatがLensStudioにAIツールを統合。
没入体験でどう価値を届けるか
結局のところ、体験を前にした利用者にとって、やるかやらないかの判断は一つに集約されます。その体験から得られると感じる便益は、そこへ至るまでの手順すべてを踏む面倒を上回っているか。
この一般則は人間のすることのほぼすべてに当てはまり、没入体験を設計するときにはいっそう重要になります。
摩擦はさまざまな場面に潜んでいます。
- ARでは、利用者はスマートフォンを取り出し、QRコードを読み取り、場合によってはアプリを入れ、体験の読み込みを待ち、その仕組みを素早く理解しなければなりません。位置連動型の体験なら、そこにいなければ現地まで行く必要があります。顔や画像を認識させるなら、周囲は十分に明るく、場所にも余裕がなければなりません。
- VRでは、利用者はヘッドセットを購入済みで、長時間装着する気がある必要があります。体験の設計が拙ければ、映像酔いに弱くないことも願うばかりです。ここでも操作は素早く覚えられなければならず、どんなインターフェースにも習熟の壁があります。指をつまむという単純な動作ですら、数回の試行と失敗を要するのです。
- ではMRは。両方を掛け合わせられます。おまけに、ビデオパススルーはいまだ不完全であり、透過型のディスプレイの場合は視野角も限られていることが多いのです。
乗り越えるべき摩擦は相当なものです。このニュースレターで繰り返し言ってきましたが、だからこそ、技術そのもののためだけに特定の技術をプロジェクトへ持ち込むことは、失敗する運命にあるのです。
こうした体験の利用を最大化するために、考え、仕込める要素は数多くあります。そして最終的にはやはり、あなたが届ける価値に行き着きます。
- コンテンツ。そう、内容は重要です。とくに体験そのものの目的が、良質な内容を味わうことである場合には。アート、文化、エンターテインメント、ゲームなどが該当します。
- 共有したくなる動機。体験の結果として、利用者は自分の人物像に合った、共有できる画像や動画を手にします。世代、周囲から見た立ち位置、好みのブランドなどに合ったものです。
- 金銭的な動機。クーポン、ロイヤルティポイント、抽選への応募権、無料の商品など。
- 課題の解決。多くは産業の文脈ですが、時間や費用のかかる工程を改善できる解決策であれば、定着する可能性は非常に高くなります。VRによる研修と、複雑な作業を支援するARが最も一般的です。現行のやり方と比べて効率が上がることが条件です。
- 既存顧客のブランドへの関与。新規獲得だけでなく、顧客の維持とロイヤルティも没入体験によって高められます。すでに好意を持ってくれている顧客を惹き込む企画を設計することで、価値を届けられます。
- 学び。教育的な要素や重要な情報を加えることで、利用者は体験から何かを持ち帰れます。
- 目新しさ。これは例外です。技術そのものが真新しく有望であれば、人は行列をつくってでも試そうとします。ただしご注意を。それは長くは続きません。
これらは氷山の一角にすぎません。どれもプロジェクトの設計段階で丁寧に検討する必要があります。
補足すると、誰にも使われなくても体験に価値がある場合もあります。最終的な発注元にとってのショーケースになり得るからです。革新性の誇示、ブランドの発信、先行者としての立ち位置などです。
いつものように、この進め方について私と一緒に考えたい方は、こちらまたはLinkedInからご連絡ください。
今日、MoonValley.aiを試してみました。まだいかにもAIらしい雰囲気は残りますが、良い滑り出しです。
今週のニュース:
- AIによる体験制作の支援はいま熱い話題であり、Snapchatも最新版でこの流れに加わりました。AR体験づくりの民主化にとって、大きな一歩です。
OpenAIとの提携により、制作者は指示文から顔のエフェクトをつくれるようになります。
そしてMeshyとの提携により、テクスチャや質感を生成できるようになります。
the-decoder.com - ByteDanceがPicoを再編しているまさにそのとき、Metaは来年発売予定の次期端末について、配信とコンテンツ拡充のためTencentとの提携を発表しました。
InstagramとFacebookが禁じられている国でのMetaの再登場は、興味深いものがあります。
対象はQuest 3ではなく、より安価な別バージョンです。端末の売上の大半はMetaが得て、Tencentはコンテンツから収益を上げます。Apple Vision Proの発売を控えた2024年に向けて、MetaはVRヘッドセットという盤上で慎重に駒を進めています。どう展開するか見ていきましょう。
DALL-Eで生成した画像 - 同様に、SamsungとGoogleもApple Vision Proの発表を受けてVRハードウェア戦略を見直す時間を取り、いまは2024年末の投入を目指しています。かなり先の話であり、それまでにMetaもPicoも新しいヘッドセットを出しているはずです。2024年は荒れそうです。
ZDNET - 最後に、Humane AIが製品を発表しました。これまでにない種類の端末です。
胸に装着し、触って操作でき、音声でやりとりし、写真も撮れます。さらに手のひらに情報を投影します。
AIが中核にあり、メッセージを書き、情報を検索し、通知をまとめ、健康状態を追跡します。要するに、本格的なAIアシスタントです。
謳われている内容は驚くべきものです。まだ判断を保留していますが、話がうますぎるようにも思えます。レビューを楽しみにしていますし、できれば試してみたいところです。
Humane AI
ポッドキャストから
毎週、Guillaume BrincinとSébastien Spasとともに、ポッドキャストLost In Immersionをお届けしています。今週の内容は次のとおりです。
- 先週触れたとおり、Luma AIが非常に印象的なテキストから3Dを生成するAIを公開したので、番組中に遊んでみました。Sebの指示文は「コウモリの形をした、光るエイリアンの宇宙船」。結果はこちらと、下のスクリーンショットでご覧いただけます。
Luma.ai Genie - MetaがQuest 3でオクルージョンを有効にする開発者向けの拡張を公開しました。Sebが試したところ、結果はなかなか良く、仮想の物体が現実の場面により自然に溶け込むことが期待できます。
Meta - VR業界はほぼ当初から、VRが地上における一部のメンタルヘルスや健康の課題に非常に有効だと知っていました。そしていまや宇宙でも、です。数日前に打ち上げられたSpaceXのシャトルには、XRHealthのアプリを組み込んだVRヘッドセットが積まれ、ISSの宇宙飛行士が孤立感、ストレス、閉塞感といった影響への対処に使えるようになります。
実際のアプリの画面がないので、別のミッションでHoloLensを使う宇宙飛行士の写真を載せておきます。 - ここ数か月、「画面を置き換える」ことを掲げたヘッドセットが数多く登場しました。先週はXRealについて話しましたが、今度はNimo ARグラスが発表されました。ここでもやはり、視野角が十分に広がり、6DoFのトラッキングが安定するまでは、これらのグラスは映画鑑賞くらいにしか向かないでしょう。
Nimo 1 Glasses
下のポッドキャストをご覧ください。毎週火曜UTC10時にTwitchで配信、Youtube、Spotify、Apple Podcasts、Google Podcasts、Amazonでも聴けます。
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